こんにちは、フラッペと申します。
今回は、先日日本語吹替版が公開となったアニメ映画「羅小黒戦記(ロシャオヘイ戦記)」の解説・感想回となります。
あらすじ
本作は、黒猫の妖精”シャオヘイ”が「自分の居場所を見つける」という物語となっています。
世界観は、人間と妖精が共存する世界。
しかし、多くの人には妖精の存在は知られていない、隠されているといった感じです。
故郷の森を人間の手によって奪われたことによってシャオヘイは、ひどく人間を憎んでいます。
ある日シャオヘイは、ひとりの妖精、ひとりの人間と出会います。
この出会いが後に人間と妖精の均衡を揺るがす大事件に発展してしまいます。
そのときシャオヘイは、どんな未来を選ぶのか?居場所は見つけられるのか?
千と千尋の神隠し × 異能力バトル
鑑賞後に抱いた率直な感想は、
「MTJJ監督、日本のアニメ・漫画大好きなんだろうな~」でした。
もっと言うと本作は、
「俺の大好きな日本アニメ全部ぶち込んで映画にしました!」という作品です。
まず、本作の主題について振り返りますと
本作は、主人公シャオヘイの成長物語であり、
その裏側で環境破壊や自然との調和といったメッセージも込められた作品です。
このテーマは、手垢が付くほどいろいろな作品で語られてきましたが、
私が一番近いなと感じたのは、スタジオジブリ作品「千と千尋の神隠し」でした。
千と千尋の神隠しでは、
主人公千尋は、湯婆婆に名前を奪われたことにより自由を奪われてしまいます。
この物語では、名前はアイデンティティ(自分らしさ)の象徴として語られています。
さらに奪われてしまうと元の世界に帰れなくなるという恐ろしい設定もありました。
言うなれば、千と千尋の神隠しは、
アイデンティティを喪失した主人公が、奮闘することでより強固なアイデンティティを確立するという物語なのです。
少し脱線しましたが、羅小黒戦記も同じく
居場所というアイデンティティを人間によって奪われてしまった子猫の物語です。
以上の点から羅小黒戦記の構成は、千と千尋の神隠しと非常に似ているといえます。
土台となる千と千尋の神隠しに、なんと監督「異能力バトル」の要素を割材にしてしまいます。火を操るもの、金属を操るもの、地面から木を生やすもの。
ナルトやハンターハンターといった日本の少年漫画で一度は見たことのある設定なのではないでしょうか?
「おいおい、神聖なるジブリになんてもん加えてるんだ!」
そう思ったジブリファンの皆様、ご安心ください。
この映画、ちゃんとまとまっております!
ここからはネタバレありの解説となりますので、出来れば本編視聴後にご覧ください。
↓↓↓以下、ネタバレあり↓↓↓
シャオヘイの選んだ未来
妖精フーシー(CV櫻井孝弘)は、物語の終盤でシャオヘイと同じく故郷の森を人間に奪われたことが明らかになります。さらにフーシーは、他人の能力を奪えるという能力を持っていることが明かされます。ハンターハンターの盗賊の極意(スキルハンター)かよ(笑)
人間への強い憎悪を持ったフーシーは、シャオヘイの隠された力「領界」を奪って人間界を支配しようとします。「領界」という力は、その空間を支配する能力。Fateシリーズにおける固有結界、呪術廻戦における領域展開のようなものです。
要はその空間の中では勝ち目がないということです。
櫻井孝弘は、いつもこんな役ばかりだな(笑)
誠実に見えるけど、その根っこにはダーティーな一面をもったキャラが反旗を翻す。
そんな「櫻井孝弘の模範解答」のようなキャラが、本作の黒幕フーシーであります。
一方で、人間ムゲン(CV宮野真守)は、序盤では悪役のように描かれますが、実は良い奴。
人間界と妖精界の均衡を保つための執行人であることが明かされます。
物語の終盤は、この二人の異能力バトルです。
そこに登場するシャオヘイ。
もともと人間をひどく憎んでいたシャオヘイですので、フーシーに協力してムゲンを倒すことだってできたはずです。しかし、ムゲンと協力してフーシーを倒します。
シャオヘイは、ムゲンとの旅を経て「人間との共存」を選んだのです。
ムゲンとの旅で価値観を少しずつ変化させるシャオヘイの様子は、ぜひとも本編をご覧ください!
シャオヘイの居場所とは?
物語のラスト、シャオヘイは妖精たちが住む場所「館(やかた)」へと連れていかれます。
ムゲンは、館の入り口で足を止めます。館は、妖精たちの住む場所でありムゲンは立ち入ることができないようです。
「ここでお別れだ。また様子を見に来る。」
そこでシャオヘイの脳裏には、ムゲンとの旅の思い出がフラッシュバックします。
それは、一緒に食事をしたり修行をしたりと何気ない思い出です。
「師匠!一緒にいたいです!」
呼び方が師匠に変わっているのもグッとくるポイントですね。
号泣するシャオヘイは、ムゲンに抱き着き物語は終わります。
物語序盤では、人間のいない場所に居場所を求めたシャオヘイ。
旅を経てムゲンこそがシャオヘイの居場所となったのです。
この展開、劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデンでも語られたギルベルトとヴァイオレットの関係に近いものを感じます。
「大切な人がいる場所こそ居場所なんだ。」
そんなあったかいメッセージが込められているのが本作「羅小黒戦記」です。
まとめ
今回は、中国発のアニメ映画「羅小黒戦記」の解説・感想を語っていきました。
本作は、MTJJ監督の「俺の愛した日本アニメを1本の映画に詰め込んだぜ!」という非常に愛の籠った作品です。
1本の映画としても完成度が高く、名作「千と千尋の神隠し」を思わせる主題や構成が隠されていました。
本作には「自然との向き合い方、どんな未来を選ぶのか?」というメッセージが込められておりますが、今だからこそより一層刺さる作品になっているなと感じました。
新型コロナで私たちを取り巻く環境は、ここ一年で大きく変わってしまいました。私たちもシャオヘイ同様、目まぐるしく変わる環境に翻弄されているのです。もしかしたらシャオヘイのように自分の居場所を探し続けている人もいるかもしれません。そんな私たちの背中を優しく押してくれるのが、本作「羅小黒戦記」です。
語り忘れましたが、本作は、とにかく黒猫シャオヘイがかわいい映画となっています。シャオヘイとムゲンの旅も細かいギャグも多くエンタメ映画としても質が高いです。
世間は鬼滅フィーバーで映画館は、鬼滅の客でいっぱいですが
ぜひともシャオヘイを劇場で観ていただきたい!
オリジナルアニメ映画でここまでのクオリティのものは、数年に1本クラスであると思います。
長くなりましたが、記事を読んでいただきありがとうございました。
記事への感想・シャオヘイの感想等コメントを頂けると幸いです。
それではよきオタクライフを!
アディオス!